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Viva Yasuni! Amazon's Challenges to Oil Addicted Societies: What can Japan learn from Ecuador now?

Viva Yasuní! 石油依存社会に対するアマゾンからの挑戦~日本は今、エクアドルから何を学べるのか?

シンポジウムを開催しました

去る9月6日、東京の上智大学において、「エクアドルの挑戦に学ぶ実行委員会」(NIジャパンもメンバー)と上智大学グローバル・コンサーン研究所の共催で、「Viva Yasuní! 石油依存社会に対するアマゾンからの挑戦~日本は今、エクアドルから何を学べるのか?」というシンポジウムを行いました。エクアドルの挑戦に学ぶ実行委員会のメンバー団体は以下の通りです。

【エクアドルの挑戦に学ぶ実行委員会】
 開発と権利のための行動センター/ATTAC Japan(首都圏)/ニュー・インターナショナリスト・ジャパン/アジア太平洋資料センター/地球の子ども新聞/ピースボート/パルシステム生活協同組合連合会/ナマケモノ倶楽部/日本ラテンアメリカ協力ネットワーク

このシンポジウムは、エクアドルのコレア大統領来日(来日は9月5日~9月8日)に合わせて計画されたイベントで、ヤスニITTイニシアティブの話を中心に、平和で持続可能な社会への道を模索するエクアドルの現状を知って、日本がエクアドルから学べること、エクアドルの挑戦を支援するためにできること、国際社会の一員として考えるべきことを議論しようという目的で計画されました。

準備期間は1カ月足らずしかありませんでしたが、「エクアドルの挑戦に学ぶ実行委員会」(以下実行委員会)の各団体の協力とがんばりで、日本ではあまり話題に上らない国とテーマであるにもかかわらず、当日は会場がほぼ満員となる100人近い人々が来場しました。以下はスピーカーと各テーマです。

「ヤスニITTイニシアティブ映像の上映」日本語解説:青西靖夫さん(開発と権利のための行動センター)
「ヤスニITTイニシアティブとは」諸英樹(ニュー・インターナショナリスト・ジャパン)
「コレア政権誕生にいたるプロセスから現在まで」新木秀和さん(神奈川大学、エクアドル研究者)
「米軍基地問題と平和憲法会議」吉岡達也さん(ピースボート)
「不当な債務を帳消しに」春日匠さん(ATTAC京都)
「フェアトレードから考える『開発』のあり方」藤岡亜美さん(ナマケモノ倶楽部共同代表)

私は2番手で、まずはヤスニ近くの地域で行われている石油開発で被害を受ける自然と人々について写真を使って説明し、その後ヤスニITTイニシアティブの概要説明を行いました。今日は改めてヤスニとその課題について簡単に振り返ってまとめてみたいと思います。

ヤスニについて

まず、ヤスニって何?という人も多いと思います。ヤスニとは、エクアドル北東部、ペルーと国境を接したアマゾン地域にある国立公園で、世界で最も生物多様性に富んだ地域のひとつと言われています。面積は98万2,000ヘクタール(青森県より少し広いくらい)、1ヘクタールあたりの樹種は655種以上で、カナダと米国を合わせた地域全体の樹種よりも多く(または、ヤスニの1ヘクタールの土地には北米大陸全体に生息するのと同じくらいの生物種が生息している、という言い方もされています)、この自然の恵みに依存して暮らす先住民族がいて、その中には外界と接触を断って自ら孤立して暮らすタガエリ民族、タロメナニ(タロメアン)民族もいます。1989年ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、緩衝地帯なども含めてこの一帯168万2,000ヘクタールを生物圏保護区に指定しました。

そしてヤスニITTイニシアティブというのは、ひと言で言えば、エクアドルがこのヤスニ国立公園に眠る石油の開発を断念し、自然環境を保護し、その自然に依存して生きる地域の先住民族の生活を守り、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量削減にも貢献する代わりに、石油採掘で見込まれる収入の半分を国際社会がエクアドルに支援するという提案です。

仕組みとしては、ヤスニで確認されている8億4,600万バレル(エクアドルの石油確認埋蔵量の約20%)の石油を採掘した場合に見込まれる石油収入72億ドルの半分である36億ドル(13年間の合計)を、国連開発計画のマルチドナー信託基金(MDTF)のひとつ「ヤスニITT信託基金」を通じて国際社会が支援(拠出)するというものです。

拠出は、個人から政府、NGOから企業まで誰でも可能で、拠出者にはヤスニ保証書(CGY)が発行されます。ただし、一定額以上でないとCGYは発行されず、それに満たない場合は一般寄付として扱われます。CGYには拠出額と、その拠出額で排出を避けられた二酸化炭素の量も明記されます。この量は、ライプチヒ炭素市場での欧州連合排出枠(EUA)の価格から計算されます。今のところ、CGYは炭素取引には利用できないとされています。

エクアドル政府はこの資金を、自然保護と生態系の回復、再生可能エネルギープロジェクトの推進、ヤスニ地域の住民の社会開発プログラム(保健、教育、職業訓練など)の実施、その他持続可能な社会に向けた新たな制度のための調査研究に使用します。

以上が大まかな仕組みです。エクアドル政府としては、石油が大きな収入源となっている(石油はエクアドルの総輸出額の6割あまりを占める)にもかかわらずそれを一部あきらめるのだから、今まで二酸化炭素を排出し放題で自然環境も壊してきた先進国に対し、その責任の一端を担ってほしいという主張です。

日本も含め拠出する側からすれば、確かに石油を掘らなければそれが燃やされることもなく二酸化炭素の排出(この8億4,600万バレルの石油を採掘しないことで回避される排出量は4億700万トンで、2007年の日本の年間排出量の3分の1くらいになる)はないわけで、しかも地球の肺と言われるアマゾンの貴重な自然も破壊されることなく、そこに住む人々の生活や人権も尊重され、エクアドルが持続可能な社会へ進む手助けにもなると考えると、非常に価値のある試みだと思います。

ヤスニへの期待

今回来日したコレア大統領は、NHKや共同通信のインタビューでもヤスニの石油開発をしない方針と国際社会からの支援の必要性を訴えています。外務省のウェブサイトを見ると、9月6日に行われた日本エクアドル首脳会談後の昼食会では環境問題が主要な話題となり、エクアドルのエスピノサ自然・文化遺産調整大臣が「温暖化対策,生物多様性保護,先住民保護等を目的としたアマゾン地区の自然保護プロジェクトに関する説明」をしたと書かれています。

この案はもともと石油開発で環境や暮らしに被害を受けてきたエクアドルの人々とNGOの間から出てきたものをエクアドル政府が検討して採用したもので、2008年9月に国連の場でコレア大統領が発表したのが公式な国際舞台へのデビューとなりました。当初国際社会の反応は鈍く、コレア大統領も国際社会の支持が集まらなければヤスニの開発に着手するというような発言を何度も行って実現も危ぶまれてきました。しかしようやく今年の8月3日、ヤスニITT信託基金に関する取り決めがエクアドル政府と国連開発計画の間で結ばれました。

NIは2008年7月号でヤスニ特集を組み、英国にヤスニの地元の人々を招待して講演ツアーや国会議員への働きかけを行い、ヤスニの素晴らしさと熱帯雨林における石油開発の問題を写真で問いかける写真集『Yasuní Green Gold』を出版し、Yasuní Green Goldキャンペーンにも協力してきました。

そのような経緯もあり、3年かかってようやくヤスニITTイニシアティブが本格的に始動したことは非常に感慨深く思います。このヤスニ基金に資金が集まり、それが活用されて石油が掘られることなく自然が保全され、エクアドルが持続可能な社会に向けて大きな一歩を踏み出し、国際社会も地球温暖化防止に貢献することができればそれは本当に喜ばしいことです。

この仕組みがうまく回るためにはまず国際社会からの資金が必要ですが、今のところ国として拠出を表明しているのはドイツ(13年間で8億ドル)だけです。そのほかに、スペイン、フランス、スイス、スウェーデン(合計で7億ドル)が検討中とのことです。ただ、もしも2011年末までに基金最低額の1億ドルが実際に集まらなかった場合、ヤスニITT信託基金は解散になってしまうので、拠出表明だけでは不十分です。

ヤスニITTイニシアティブに対する日本政府の考えや動きはまだまったく伝わってきません。しかし、世界第5位(2007年)の温室効果ガス排出国としてこの新たな試みを無視することはできません。また、日本自身も持続可能な社会を目指す国としてその試みを支援して見守り、日本が学べることや取り入れるべき点は積極的に応用を考え、協力できる点は前向きに支援するという姿勢も必要でしょう。

ヤスニの課題

とはいえ、このヤスニITTイニシアティブをとにかく推進していけばすべてが解決するかというとそれは誤りです。というのもコレア大統領は、ヤスニでの石油採掘をあきらめる一方で、他の場所での石油開発は進めています。また、現地のNGOによれば、先住民族の反対でストップしていた開発にも着手する動きがあるとのことです。彼らは、ヤスニで得られない収入を他の石油開発で得ようとしたり、ヤスニが他の開発から目をそらせるために使われたりすることは許されないと主張しています。石油収入が大きな割合を占めているとはいえ、脱石油依存経済とそれに代わる持続可能な経済・社会を模索するエクアドルの姿勢が本物なのかどうかを見極める必要があります。

また、ヤスニITTイニシアティブが単なる新たな排出権取引に成り下がってしまうのではないかという心配もあります。当初市民社会から出されたヤスニ提案には炭素取引は含まれておらず、これまで資源を消費し二酸化炭素を排出してきた国際社会の責任としてヤスニへの支援を呼びかけていました。

排出権取引とは、本来であれば自分が排出している二酸化炭素は自分で減らす努力と工夫をすべきところを、そのような面倒なことをせずに商売に専念していてもカネさえ出せば他の場所で他人が減らした分を排出権として購入し、自らの削減分とすることができるという仕組みです。それは、排出という本質的な自らの責任を放棄し、安易にカネに頼り他人の努力を利用するだけでなく、新たな投機マネーの流入先となる危険性も指摘されています。

脱石油依存社会とヤスニ

また、より幅広く考えると、ヤスニで起こっているような資源開発と自然破壊や先住民族の権利の侵害の問題は全世界で起こっています。石油関連だけに絞ってみても、ナイジェリアのオゴニ民族(アムネスティ・インターナショナル日本の参考ページ)、北極圏のシベリアからアラスカまで広範囲に居住する先住民族(NIの北極圏特集号)、オイルサンド採掘の影響を受けるカナダのアルバータ州の先住民族(NIのオイルサンド特集号)、そして北海道の北40キロと日本のすぐそばで日本の企業連合が開発にかかわり、日本が石油・天然ガスを輸入しているロシアのサハリンの先住民族(FoE Japanの参考サイト)などが挙げられます。彼らは、先祖代々の土地にたまたま資源が眠っていただけで土地を奪われ強制移住させられたり、人権を無視した弾圧や処遇を受けたり、住まいのすぐ近くに油井、パイプライン、精油所などの迷惑施設がきちんとした同意もなく建てられたり、流出した石油によって土壌、水、森林などが汚染され、動物や魚の味がおかしくなったり異常が見られたり、そして発がん率が上昇するなどの健康被害も見受けられるようになったりするなど、非常に大きな困難に直面しています。

さらには、石油依存社会を取り巻く状況も関係してきます。たとえば北極圏での石油開発が進んでいる背景には、石油価格の上昇や、温暖化によって海氷の厚さが薄くなったり凍っている期間が短くなったりして(現在の北極の氷の様子:北極圏海氷モニター)、採掘コストが相対的に安くなったり技術的難易度が下がったりという理由もあります。一方アルバータ州のオイルサンドは高い採掘コストがネックでしたが、石油価格の高騰によって採算がとれるようになったのと、石油の枯渇が叫ばれて「非従来型石油」が注目を浴び、2003年からオイルサンドが世界の原油埋蔵量の統計に含まれさらに注目が集まりました。これにより膨大なオイルサンドが眠るカナダは、突如として世界第2位の原油埋蔵国になりました。

現在石油価格は、2008年夏頃の1バレル150ドルをにらむような異常な状況にはなく70ドル台で推移しています。しかしそれでも2000年代初めごろの1バレル20~30ドル台に比べると倍以上となっています。2004年頃から顕著になった石油価格の上昇とその後の急騰をつくりだしたのが投機資金流入であったことはいくつかもの分析が指摘しており、日本政府も2008年のエネルギー白書の中で投機資金の原油先物市場への影響を示しています。

石油輸出に経済を依存するエクアドルと、生活全般(ともちろん工業製品輸出も)を大きく石油に依存する日本(そして先進国)。石油依存社会の現実には、政治から金融まで、アマゾンやヤスニの外のさまざまな事情が絡んでいます。その中でヤスニITTイニシアティブに注目が集まるのはなぜか? それは、新しい考え方と仕組みを持つ今までとは違う視点からの取り組みとして可能性が感じられるからです。これまでの古い考えを排除し、この取り組みが当初の目的に向けてきちんと運営され、脱石油社会、持続可能な社会のモデルとして軌道に乗ってくれば、世界のさまざまな場所でこの手法を取り入れ、地球規模での石油社会脱却への道が開けるでしょう。実際に、グアテマラ、ナイジェリア、フィリピンなどがこの仕組みの導入を検討しています。

日本の市民社会は、石油依存社会脱却の重要な一歩であるこのヤスニITTイニシアティブをどのように支援していけるのか。エクアドルの挑戦に学ぶ実行委員会ではその方法と今後の計画を検討しています。

京都でも9月5日に「ヤスニ計画:アマゾンの自然を守る逆転の発想」というシンポジウムが行われました。

NIジャパン

On 6 September, the Committee on Learning from Ecuadorian Challenges (CLEC) held a symposium "Viva Yasuni! Amazon's Challenges to Oil Addicted Societies: What can Japan learn from Ecuador now?" in Sophia University, Tokyo.

It was a joint conference by CLEC and Sophia University's Institute of Global Concern (IGC). It was planned for this time of period because Ecuadorian President Rafael Correa were scheduled to visit Japan from 5 through 8 September. NI Japan is a committee member of CLEC.

The purpose of the symposium is to introduce the Yasuni-ITT Initiative scheme and other efforts by Ecuador toward a peaceful sustainable society. We aimed to know Ecuador's current attempts and to discuss what Japan can learn from them; how Japan can support Ecuador's efforts; what Japan should consider as a member of the international community.

We had less than 1 month to prepare for the symposium, so we didn't have enough time for publicity. But since the CLEC members and IGC put a huge effort to spread the information about the symposium, nearly 100 people got together on that day, even though the theme like this and the country, Ecuador, are not popular ones among the Japanese people.

There were 6 speakers and their topics were: Yasuni-ITT Initiative, Ecuadorian political background of the birth of the Correa regime, the US military base and the Conference on Peace Constitution, debt cancellation, fair-trade and "development". After 2 videos about Yasuni-ITT Initiative were showed, I talked about Yasuni-ITT Initiative.

About Yasuni and Yasuni-ITT Initiative, you can check supporting websites, such as SOS Yasuni and Yasuni Green Gold Campaign.

And about the details of the scheme, you can get information from the UNDP Ecuador Yasuni ITT Trust Fund website.

At the symposium, I first explained what have been going on Amazon's rainforest near the Yasuni area by showing some photos. In some places, oil wells are already constructed and oil is being drilled. Oil pipelines are laid down in the forest and near local people's houses. Oil spills from the wells and pipelines, and often abandoned oil affect environment and the life and health of people there.

That is a backdrop of Yasuni-ITT Initiative. Because of such terrible situation, locals and NGOs came to propose an idea to raise money for not drilling oil. In 2008, President Correa picked up the idea and announced the initiative at a UN conference in September 2008. Since then the initiative appeared in front of the international community. But developed countries showed little interest. On 3 August this year, however, the Memorandum of Agreement between the Ecuadorian government and UNDP is signed to manage Ecuador Yasuni ITT Trust Fund.

That is not the end. When we, as a civil society member, look at the initiative, there are some problems. First, the initiative now includes carbon trading scheme. It was not included in the original Yasuni proposal from the civil society of Ecuador. It means that the initiative can become a mere new form of carbon trading scheme.

Second, while the initiative has started, other oil exploitations continue. According to a local NGO of Ecuador, even some suspended oil development projects caused by the strong opposition from indigenous people in the areas. Then we have to think if Correa really want to heading to a sustainable society without the oil-export dependency.

How can the Japanese civil society play a role to promote Yasuni-ITT Initiative? The CLEC members are discussing a plan for further activities.

>NI Japan

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